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特任助教を公募します、ただし名古屋大学出身者限定な

いわゆる「ポスドク問題」として博士学位取得者の就職状況が騒がれる中、名古屋大学ではここ数年にわたり非常に面白い取り組みをしています。二年前にこの事実を知ったとき、いち研究者として怒りが込み上げてきました。二年間かけて熱冷ましをしてみましたが、やはり看過することはできないため、ご紹介します。 

平成27年度若手育成プログラム(YLC)教員募集のページを見てみましょう。この公募は、名古屋大学が文理問わず学内全体で特任助教を 10 名程度採用するものです。それだけであれば、京都大学の「白眉」にも見られるように、別に珍しい取り組みでも何でもありません。

この公募の恐ろしいところは、「女性枠」に並んで「学内枠」という聞いたことのない枠があるところです。つまり、名古屋大学出身者以外応募できません、ということです。

以下に募集要項の応募資格の箇所を抜粋します。

A・B)共通事項

①年齢満 35 歳以下 (平成 27 年 4 月 1 日時点。ただし、医学系研究科博士課程修了者は満 37 歳以下)

名古屋大学在籍教員が推薦する者(採用予定者の受入部局の長及び受入教員)

複数の応募資格を有する場合は、該当する全ての枠に応募可能としま。

ポスドク経験を有することが望ましい。

A)学内枠

名古屋大学大学院博士後期課程又は名古屋大学大学院博士課程の修了者(博士学位取得者(平成 27 年 3 月末時点取得予定者を含む)。

・博士課程在学中もしくは修了後に、海外留学経験(おおむね1年以上)を有する 者又は採用期間中もしくは期間終了後速やかに留学すること(受入部局がその実施について最大限の努力をすることを求めます)。ただし、文科系分野については、 海外留学経験は必須ではないものとします。

B) 女性枠

・大学院博士課程の修了者(博士学位取得者(平成 27 年 3 月末時点取得予定者を 含む)。なお、海外留学経験(予定)は必須ではないものとします。

※女性枠は学内応募も可能とします。

名古屋大学在籍教員が推薦」というのは少し引っかかりますが、募集要項の前半は至って普通ですし、海外経験を要件に入れるというのも「スーパーグローバル」的に重要でしょう。問題なのは名古屋大学大学院博士後期課程又は名古屋大学大学院博士課程の修了者」に限定しているところです。

国立大学法人、その中でも旧帝大を初めとする研究大学は、多種多様な背景を持った優秀な研究者を採用して研究成果を上げるための組織です。男女の差別、国籍や民族の差別、そしてもちろん、出身大学によって採用の判断をすべき場所ではありません。

その大学で教育した大学院生を博士号取得者として社会に送り出し、名古屋大学に限らず日本中、世界中の大学や研究機関で研究させることが重要です。またその逆も然りで、色々な組織の出身者を取り込んでいくことで、文化の交流、優秀な層の獲得、大学の研究・教育機関としての質の向上が見込まれると信じられています。

にも関わらず、名古屋大学のような日本を代表する大学のひとつが、学内出身者限定の公募を行うというのは一体どういうことでしょうか。何度も正当化するための理由を考えてはみましたが、どうにも思いつきません。例えば「名古屋大学でしか研究を行えない特定の優れた分野を継続させる」のような理由であれば、採用時の志望動機として考慮すれば良いわけですし、また他大学出身の名古屋大学在籍中のポスドクも応募できたって良いわけです。また仮に「出身者に限定することで母校に対する愛を育む」という理由であったとしても、名古屋大学の学部出身者は含まれない理由が分かりません。博士課程から特任助教まで、一貫したキャリア形成を名古屋大学が担うという目的だとしても、一般的には同じ研究機関にとどまり続けることは不健全だと学術分野では見なされています。

そうやって考えてみると、この公募はポスドク問題を名古屋大学限定で解決する、つまり自分のところの博士号取得者のみを救済するという施策にしか見えないのです。

この公募は昨年度もありました。その前も同様にありましたが、二年前は募集要項が非公開で学内でしか情報が回っていなかったため、僕が名古屋大学に着任して初めてこの公募のことを知ったくらいです (全く「公」ではないですね)。

(以下、2014.10.24 追記)

名大法学部の大屋教授の tweet、ちょっと意味が分からない。

 

「ドクター後キャリアを支援」というのがおかしい、というのが大前提。また高等研究院の特任助教をやるとなぜその出身者の教育に繋がるのかも全く分からない。一般的に同じところにとどまるのは悪と見なされている。なぜなら教育上悪いから。なので「教育が主眼」というのは、全くもっておかしい。

また、名大でこの特任助教をやったからって特別に教育機会を得られるわけではない。普通のポスドクや特任助教と何も変わらない。だから「教育が主眼」なんて言葉に何の意味もない。

  「カネ出してヨソから」ではなく、同じ金を出すなら身内限定よりもちゃんとした公募にしたほうがより優秀な層が集まるでしょ、という話。これは世界常識だし、全く安直な策ではなく、誰でも分かる当然の話。なので「後者が絶対的に正しい」とかじゃなくて、この人の前提が間違っている。

 ポスドクや特任助教に限らず、内部昇格が前提でない助教だってあるし、任期ありなしは今関係のない話。「公募で外に出すための制度」は博士課程のうちに終えるべき。

大学院生、ポストドクターのための就職活動マニュアル

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学位論文のコピペの責任は誰が負うべきか、学位剥奪の前にすべきこと

修士論文や博士論文といった学位取得論文にコピペが見つかった場合、誰が責任を負うべきか。これは論文の著者たる学生本人が第一義に責任を負うのは当然である。しかし、そのようなコピペを堂々と書かせてしまうような指導教員や大学にも、かなりの問題がある。 

小保方氏の博士論文以外にも、早稲田大学の該当研究科ではたくさんのコピペ博士論文が発見されている。これは小保方氏個人の倫理観欠如と言うよりも、その研究科ではコピペがある種の伝統になっていたと思われる。

このような悪しき「伝統」が早稲田特有、バイオ系特有のものかというと決してそんなことはなく、他の分野、他の大学においても特に修士論文では散見される。実際、先輩や他人の書いた修論や論文からコピペをするという不正を、自分は複数の大学で見たことがあるし、自分の経験は全て物理学の分野である。

自分の発見した不正行為に関して言えば、学生本人たちに罪の意識は低い。何故かというと、それが悪いことなのだという教育をちゃんと受けていないし、先輩もやっていることだからだ。そして、指導教員や審査員が真面目に学位論文に目を通さないばっかりに、このようなコピペ行為が明らかになるのは、残念なことに彼ら以外の読者が目を通したときなのである。

多くのコピペ行為は、その発見が困難なものではない。よそから丸々文章を引っ張ってきているため、自分の学位論文に直接関係のないことまで書かれていたり、自分で考えた文章ではないため、他の章との論理展開と不整合だったりする。また微妙に「てにをは」を変えてきたりするため、練られた元の文章と違い、日本語として破綻している場合がある。訓練された研究者がその論文をちゃんと読めば、「あれ、何かこの部分はおかしいな」と気が付くはずである。例えば小保方氏の博士論文の場合、図の出典が一切明記されていないこと、自分の博士論文の動機の説明などではなく一般論や該当分野の解説が延々と続くことからして、(ちゃんと読んでいるのであれば) 指導教員や論文審査員はコピペに気が付くのは当然である。

学生の論文指導をちゃんとやらない指導教員にあたってしまった場合、そしてコピペをしてはいけないと教育を受けなかったり、周りや先輩が当然のようにコピペをしている環境に学生が置かれてしまった場合、一度学位の授与されてしまった卒業生から学位の剥奪するというのは、困難なのではないだろうか。また、学位を剥奪するのが適当だろうか。書き直しを命じて再度審査をやり直すというのが、教育機関として真っ当な対応方法だと思う。そして、そのような指導や審査を行った大学、教員に対して、厳正な処分が下されるべきだ (厳格な教育や審査が行われていたのに、学生が巧妙に不正行為を忍ばせたのであれば、この限りではない)。

長い文章のコピペほど悪質ではないが、軽微な不正行為の例として図表の無断転載 (引用元を明記しないで使用) がある。学位論文では特にイントロ部分などで他の論文の図を使用することがあるのだが、元の論文から図を持ってきたことを明記しない場合、「この図は私が自分で作りました」と宣言することに等しく、不正行為とみなされるし、また著作権の観点からも不適切である (もちろん、その図を学生本人が作ったわけではないのは、論文の流れから明白な場合が多い)。

少なくとも宇宙線物理学の実験系では、この不正行為*1が半分くらいの修士論文で行われているというのを経験的に知っている。そして、指導教員や修論審査員から指摘を受けることもなく、不正を残したまま学位が授与されている。

実際に自分の修士論文でも図表の引用元をちゃんと明記せずに使用したものがあるので、これが修士の学位剥奪に相当するのであれば学位授与機関である東京大学と争うことになるだろう。しかし大事なことは、そのような形式上の不備が例え東京大学であっても、ちゃんと指摘されないまま学位が授与されうるということである (形式の不備までちゃんと指導されないが、本文は非常にしっかり審査員に読んで頂いている)。もちろん大事なのは学位論文の本文なのだが、学位論文としての形式を守るということも徹底しなくてはいけない。

早稲田が今後どのような対応するかはともかく、若手の研究者がやるべきことは、ちゃんと学生の指導をすることに尽きる。多くのコピペは、指導をちゃんとすること、学位論文をちゃんと読むことで防げる。「コピペを許す空気の醸成に加担したことのない指導教員のみが石を投げなさい」と言われたら、自信を持って石を投げられる研究者はどれだけ日本にいるだろうか。

論文捏造 (中公新書ラクレ)

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背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?

背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?

 

 

*1:広いエネルギー範囲での全宇宙線のスペクトルを描いた有名な図です。あれは出典がどこなのか分からないまま広くうちの業界で使われていて、多くの学位論文や他の文書で出典が書かれずに使われています。出典が分からずに図を使うなんてのは科学としては言語同断で、こういうのはうちの業界でちゃんと浄化しないといけません。Swordy (2001) に白黒の図がありますが、最初の作成は Cronin et al. (1997) 用のようです。カラー版の初出はどこなのか不明です。

国立大学助教の給料 – その初任給と昇給の計算方法

助教になるといくら貰えるの?」という疑問を持つ院生やポスドクの方は少なくないと思いますが、人生設計に給与額はかなり関係してくるにも関わらず、公募情報などには「〜〜大学給与規定に基づき支給」のような書き方しかありません。普通の人には「〜〜大学給与規定」なんてものから算出するのは、ほぼ無理です。

名古屋大学の場合、「名古屋大学職員給与規定」と「名古屋大学職員本給細則」にこの情報が書かれています。どの国立大学も中身はほとんど同じなので、基本的に同じように計算できます。

初任給の計算

名古屋大学職員給与規定」には初任給の規定があります。

(初任給)
第6条 新たに採用する者の初任給は,その者の学歴,免許・資格,職務経験及び他の職員との均衡を考慮して,別に定める。

この「考慮して」の部分は、助教の場合だと「名古屋大学職員本給細則」にある「教育職本給表(一)初任給基準表」に基づくようです。これを見ると、4 年制大学卒で博士課程を修了した平均的な助教の場合、本給表 (俸給表) の「2 級 31 号給」から給料が開始されることが分かります。

さて、「本給表」とは何でしょうか。大学の教職員の給料は基本的に本給表に従って計算されます。そのため、年俸制でない限り、同じような経験年数、勤務年数の人は同じような給料になります。

助教の場合は「教育職本給表 (一)」を見ればよく、級が 2 級に相当し、経験年数によって号給が決定されます。

助教は「2 級 31 号給」からの開始なので、月給の基準額は 283,200 円です。ただし、博士取得後にポスドクなどを経験していると「経験年数」が加算されます。

名古屋大学職員本給細則」には経験年数に関する取り決めがあり、次のように記載されています。

(経験年数を有する者の本給)
第15条 新たに職員となった次の各号に掲げる者のうち当該各号に定める経験年数を有する者の本給は,第12条第1項の規定による号給(前条第1項の規定の適用を受ける者にあっては,同項の規定による号給。以下この項において「基準号給」という。)の号数に,当該経験年数の月数を12月(その者の経験年数のうち5年を超える経験年数(第2号,第3号又は第5号に掲げる者で必要経験年数が5年以上の年数とされている職務の級に決定されたものにあっては,当該各号に定める経験年数とし,職員の職務にその経験が直接役立つと認められる職務であって別に定めるものに従事した期間のある職員の経験年数のうち部内の他の職員との均衡を考慮して総長が相当と認める年数を除く。)の月数にあっては18月)で除した数(1未満の端数があるときは,これを切り捨てた数)に別表第8に定める昇給号給数表のC欄の上段に掲げる号給数を乗じて得た数を加えて得た数を号数とする号給(別に定める者にあっては,当該号給の数に3を超えない範囲内で別に定める数を加えて得た数を号数とする号給)とすることができる。

要は、ポスドク等を例えば 3 年と 9 ヶ月やったとしたら、端数切り捨てで 3 年の経験年数と見なし、この年数に 4 号給 (「別表第8に定める昇給号給数表のC欄の上段に掲げる号給数」に相当) を乗じますということです。

僕の場合は博士取得後に特任研究員を 6 ヶ月、学振 PD を 2 年5 ヶ月やったので、経験年数が 2 年という扱いです。したがって、31 号給ではなく 39 号給 (304,400 円) からの開始でした。わざと 1 ヶ月着任を後ろにずらせば、経験年数が 3 年という扱いになったので、毎年の年収が 10 万円くらい変わったみたいです。残念。

昇給の計算

助教の場合に人事評価がどうなっているのか理解していないのですが、勤務成績が「良好」の場合は 1 年あたり 4 号給ずつ昇給して行きます。したがって、例えばポスドクの経験年数 3 年で 5 年間助教として勤務すると、31 + 3 × 4 + 5 × 4 = 62 号給になり、月額 332,500 円になります。

だいたい、年間合計 10 万円くらい昇給すると思えば良い計算です。

助教の場合 141 号給が最大ですので、31 号給から開始したとすると、ここに達するのに 27.5 年かかります。28 歳開始だとして 56 歳くらいの時ですね。141 号給で 383,800 円なので、後述するボーナスと各種手当を含めて、最大でも年収 750 万円というところでしょうか。

その他の手当

月額 30 万円くらいと聞くと学振 PD のほうが良いように見えますが、各種手当がこれに加算されます。

一番大きいのは賞与で、名大の場合は期末手当と勤勉手当という名称です。これは年間 4.5 ヶ月分くらいのようです。つまり、月額 30 万円の号給を貰っている場合、年間ではこれに 16.5 を乗じた額、約 500 万円が基本給と賞与として支給されます。

また、大学院生の指導を行う場合は大学院指導手当が (僕の職場だと助教の場合 1 万円/月くらい) つきます。ただし、3 ヶ月以上の長期出張をすると支給されません。

地域手当が 4 万円/月くらい、住居手当が最大 2.7 万円/月です。これらは大学によって異なると思います。

僕の場合、妻子ありなので、扶養手当も 2 万円/月くらいついています。これは子供の数と、配偶者の収入によって変わるはずです。

センター試験の試験監督をやると、2 月に入試手当が 1.8 万円加算されます。土日出勤の丸二日間拘束ですので、ちと安い気もします。

あと、勤務年数に応じて退職金が加算されていきます。給料の 10% くらい (?) が毎年退職金の合計額に加算されるはずです。これが任期付きの年俸制職との見えない差でしょうか。ただし今後、退職金という制度がいつまで維持されるのかは不明です。

申請書の審査員を初めてやって感じたこと



先日、某所のある研究予算の申請書 (英語) の審査員を依頼されたので、その審査をしました。これまで何度も自分自身の予算申請はしてきましたが、審査をする側になったのは今回が初めてです。審査する側の視点で感じたことを忘れないうちにまとめておきます。これは審査員側として今回感じたことのみを書くものであり、他にも申請書を書く際に気をつける点は多々あります。そのため、以下の内容が全ての注意点を網羅するわけではありません。以前にも修士論文や夏の学校の集録や学振申請書を書く皆さんへ (書き方、注意点、心得) という記事を書いたので、そちらも参考にしてください。

審査する側の視点と言っても、申請する側でそういう視点の多くはもちろん容易に想像がつきますから、新発見がいっぱいあるというわけではありません。ただ、これまで自分が予算申請をするときに意識してきたことの確認になりました。

最近は大学が競争的資金獲得に必死なので、各大学で科研費の申請書の書き方講座のようなものを開催したり、手引きを発行したりしているようです。例えば東大では『若手研究者に向けて研究生活とキャリアパス』を一般に公開しており、「はじめての競争的資金をめざして」という副題がついています。京都大学は同様のものを部外秘で発行しています。

また以前から、大学生協の書店に行くと科研費の書き方に関する書籍を目にします。例えば『科研費獲得の方法とコツ』なんてそのものずばりの本が出ています。

こういう手引き書に記載されているコツはよく考えれば分かるような当たり前のことしか書かれておらず、わざわざ本にしなくてもという感はあります。ただ、学振の特別研究員の申請なんかだと経験の浅い修士学生が書くわけで、ぜひ先人の経験を活かして欲しいものです。

1. 書式に関すること

1.1 大きい字で書く

当たり前ですが、小さい文字は読めません。僕はまだ 30 代前半なので老眼はありませんが、小さい文字を読むのに苦労している同業者はよく目にします。審査員の多くは若手ではありません。

文字が読みづらいと中身が頭に入ってきませんので、あなたの主張も伝わりにくくなります。また、文字が小さいと 1 行あたりに入る文字数が増えるため、次の行に視線を移動するときに、違う行を間違って読んでしまう頻度が増えます。僕は日本語の申請書は 12 pt で書いています。

1.2 字下げする

段落の先頭では必ず字下げして下さい。審査員は一字一句全てに目を通しているとは限りません。論理的に書かれた文章は適切な長さの段落の組み合わせで構成されます。したがって、新しい段落の開始点を明確にすることは審査員に論理展開を分かりやすく伝えるために必要です。

僕の場合は先頭の字下げに加え、段落と段落の間に通常の行間よりも広い空白を入れるようにしています。申請書が文字で埋め尽くされず、読みやすくなります。

1.3 指定書式を遵守する

海外の場合はよく知りませんが、申請書には指定の書式があったり、Word で申請書の書式が配布されていることが多いと思います。枠の大きさを変更したり、ページ数を勝手に増やさないで下さい。申請書によっては、このような行為が減点対象になると明記されているものもあります。また審査する側からすると、ページ数を勝手に増やす行為は不公平に見えますし、「ああ、この人は注意力が足りないか、規則を破る人なんだな」という印象を持ちます。そんな人に研究をしてもらいたいとは思いません。

2. 審査員の専門性について

2.1 審査員は専門家ではない

これはよく言われることですが、審査員は申請書に関係する分野の専門家であるとは限りません。もちろん、物理系の人に生物系の審査が回ってくることは多くないでしょうが、例えば今回僕が担当した審査では、人工衛星の軌道調整 (これは工学よりで、僕の専門は宇宙線物理) に関する申請書が含まれていました。どれだけ専門の合致した審査員にあたるかは、全体の申請者数に影響してくると思いますが、専門がドンピシャの人が担当になるということは稀だと思うべきです。

2.2 専門外の人が読むという前提で書く

審査員が専門外の人だということは、物理一般の話は知っていても、その特定分野に関する知識は浅い、もしくはほとんど無いと思ったほうが良いでしょう。例えば上記の人工衛星の話の場合、人工衛星を使った観測データの解析などは自分はやりますが、その姿勢制御や軌道変更をどのようにやっているかの細かい話は全く知りません。ですから、その分野の最先端の研究や最重要課題なんかは知らないわけです。

こういう専門外の人が読むという前提に立って、研究の背景、解決すべき課題、競合研究、自分の研究の独自性を分かりやすく伝える必要があります。僕の場合、科研費の申請書の最終確認は専門家でない妻にやってもらっています。これはうちの業界の某先生からのご助言です。

2.3 略語の多用を避ける

頻繁に使う用語には略語を使う場合があります。例えばうちの分野では very high energy を VHE と略し、初出の場所で「very high energy (VHE)」などと書きます。ちゃんと定義してあるんだから読めば分かるのですが、初めて出会う複数の略語が何度も出てくると、専門外の人間には覚えていられませんし、略語の意味を忘れてしまうので本文が頭に入ってきません。略語を使うことに大きな利点がある場合、例えば紙面が非常に限られているとか、略語のほうが一般的に使われる、などの場合を除いては書き下すようにしましょう。

2.4 かなり基礎の部分から説明する

分野外の人が読む場合、研究の意義は相当に簡易に書いたとしても、そもそもの基礎の部分を全く共有できていない場合があります。素人に説明するつもりで、冗長にならない程度に基礎の部分から説明するなり、分野特有の言い回しを避けたりなどの工夫がないと、分野外の人間には理解できません。

2.5 装置名だけでなく、装置の目的も書く

申請書の中に色々な実験装置の名前が出てくる場合があります。書いている側には、装置名から何をするものなのか判断できると思っているのかもしれませんが、そうでない場合が多々あります。どのような装置なのか、何を測る目的のものなのか、簡潔に記述しましょう。

3. 図について

3.1 よそから持ってきた図をコピペして終わりにしない

自分の論文、もしくは他者の関連論文から図を持ってきて申請書に貼り付ける人がいますが、そのまま貼り付けられても理解困難な場合がほとんどです。論文の図は論文の本文や説明文との対応があって、初めて理解可能な図になります。申請書は論文ではありませんので、そのような図を貼り付けられても審査員には理解不能なものになります。不要な線を消す、単位を分野外の人にも分かるものに変更するなど、申請書用に作り直しましょう

3.2 本文中で触れない図を載せない

本文中で言及することもないのに、その図が申請書を補強するかと勘違いして余計な図を載せる人が多くいます。図を載せる限りはその図を本文で言及する必要があります。あなたの分野の専門でない人は、図だけ並べられてもどう解釈して良いのか分かりませんし、本文のどこと対応しているのかすら分かりません。

4. 文章の組み立てかた

4.1 他人に添削をしてもらう

当たり前ですが、提出前に他人に添削してもらいましょう。「ああ、これはちゃんと指導教員に読んでもらっていないな」というものは、よく転がっています。科研費に落ちて悔しがってる人も、聞いてみると誰にも読んでもらっていないなんて人もいます。そんなもの通るわけがありません。

4.2 文章の読みやすさ

英語の申請書を読み比べると、さすがに native の書いたものは読みやすく頭にすらすらと入ってきます。本当は申請書の内容で優劣をつけるべきなのでしょうが、どうしても読みやすい文章は評価が上がってしまいます。これは日本語の申請書であっても同じはずで、中身は同じでもよく練られた明快な文章のほうが、断然好印象になるはずです。何度も推敲しましょう。

4.3 結論や目的を先に書く

研究の背景やこれまでの研究を延々と書いた後に、最後に「本研究の目的は…」と書く人がいます。あなたの中では既知のことでしょうが、審査員は「この申請書は何を目的とするのか」ということを知らないと、研究の背景をいくら書かれても頭の中が繋がりません。また、飛ばし読みされてしまったら、研究の目的や結論を読み落とされてしまう可能性すらあります。審査員が絶対に一字一句読んでくれるなんてことは、期待してはいけません。

4.4 一意に読める文章にする

例えば "hoge" や「ほげ」のように言葉を括って、そのままの意味とは違う意味をもたせたりする書きかたがあります (例えば、「我々はこれまで「常識」とされてきた手法を見直し」など)。これは書き手と読者が共通の知識を持つ前提であれば理解可能でしょうが、そんなことは稀ですので、こういう書きかたは避けましょう。

5. 自分の見せかた

5.1 自分が何をしたかを書く

これまでの研究内容や研究実績を書く時に、その分野や関わった実験の説明に多くの紙面を割いてしまい、レビューのようになっているものがあります。このような欄は決してレビューを書くためのものではなく、あなたが何をしてきたかを説明し、研究実績や能力をアピールするところです。そのプロジェクトの中であなたは何を担当したか、どのような結果を出したか、そういうことを中心に書いてください。

5.2 成果の書きかたは具体的に

「私は重要な貢献をした」のような単純かつ曖昧な表現は避け、具体的にどのような貢献をし、なぜそれが重要であったのかを説明してください。また自分の学位論文、査読論文、学会発表に触れるだけ (例えば「この実験に関わり査読論文としてまとめた」とだけ書く) ではなく、どのような内容の論文だったのか (どのような成果なのか) をちゃんと書いてください。そうしないと、審査員はその該当論文を読む時間なんてありませんから、何をしてきた人なのか全く伝わりません。一発で伝わるような分かりやすい図があると、より良いでしょう。

5.3 一人称を積極的に使う

多人数で行う研究に携わっている場合、主語が実験装置名だったり、実験グループだったり、一人称複数形だったりします。しかしこれだと、申請者がやったことと他の人がやったことの区別をするのが非常に難しくなります。自分がやった部分は、積極的に一人称単数形を使うことで明示するのが良いでしょう。ただし、使い過ぎは読んでいて鬱陶しくなるので、注意が必要です。

5.4 推薦書

原則として申請者が推薦書を読むことはないと思いますが、推薦書は申請書を補完する役割があるのでもちろん重要です。分野外の人が審査する場合は推薦者のことを全く知らないので、推薦者の知名度のみが推薦書の肝ではありません (有名な先生に書いてもらえば良いというわけではありません)。推薦書がまるで申請書の中身と同じようなものだと (例えば、「〜〜君は〜〜実験で〜〜を担当した」のような申請書本文にもあるような客観的事実)、推薦書を読んでも新しい情報が得られません。推薦者とよく相談し、どういう点を推して欲しいか、申請書本体には書いてないどのような点を強調して欲しいか、ある程度すり合わせをするのも良いでしょう。特に、申請書本体は推薦者に必ず読んでもらってください

6. 何を採点されるかを考える

6.1 指定された内容とちゃんと書く

申請書には様々な欄がありますが、研究計画の欄などで「以下の項目についても、この欄で述べてください」のような指示がある場合があります。例えば科研費の研究目的の欄にも、そういう指示があります。これは絶対に分かりやすい形で書いてください。なぜなら、それが採点対象だからです。

例えば「この研究から予想される分野の発展について書くこと」という指示があったとすれば、「この申請から予想される分野の発展は重要かどうか」を評価せよという指示が審査員側に回ってきたりします。「審査には以下の内容を審査対象として見なしますので、注意して書いてくださいね」という助言なのです。

また、その予算の目的に合致していることは非常に大切です。募集要項などに書いてある事業の目的をちゃんと理解して、設立趣旨に合致するような申請書を書いてください。

6.2 なぜその金が必要なのかを説得する

たいていの申請書は予算獲得や給料、奨学金の獲得だと思います。お金の獲得です。申請書には金の使い道を書いたりするわけですが、審査員がその使い道に納得しないと金を渡したいとは思いません。なぜその金が必要か、本当に必要なのか、それをちゃんと説明してください。「他の方法でも同じことを安価にやれるじゃん」なんて思われたりしたら、評価が下がります。

研究者を目指す大学院生なら知っておきたい、天文分野のポスドクの給料の相場


学振 PD が任期 4 年間になるだとか、国立大学教員の給料が年俸制に移行するだとかというニュースを目にして、前々から気になっていたポスドクの給料の相場がどんなものか調べてみました。

日本天文学会には TENNET というメーリングリストがあり、その内容は公開されています。そこに流れる情報の数割は公募情報なので、過去ログを漁るとポスドクの給料の情報が分かります。こういう情報は若手研究者や大学院生にとってとても重要なのに、あまりまとめられていない気がするので誰かの役には立つでしょう。もしかしたら大学院進学を断念する理由にもなるかもしれない。

ざっと 1 年分くらいを眺めて、まとめたものが次の表です。特任助教と特任准教授も「ポスドク」に含めましたが、ここでの「ポスドク」の定義は「退職金や賞与のない職」です。なぜ含めたかというと、特任助教や特任准教授 (大学によって「特定」だったり「特命」だったりもします) は給与形態が助教や准教授と大きく異なる場合があるからです。

表の後ろに色々と大事なことが書かれているので、スクロールしてください。

肩書き 任期 (延長含) 月給 (万円、括弧内は海外勤務の場合) 年間研究費 (万円)
特任助教 5 助教相当
特任助教 5 助教相当
特任准教授 5 准教授相当
特任研究員 3 30 50
非常勤研究員 2 30 小額
特任助教 4 30
特任准教授 5 50
研究員 4 30 50
研究員 3 規程による
特任助教 3 規程による
特任研究員 2 33
特任研究員 3 30 50
プロジェクト研究員(特任研究員) 3 30 (52) 50
研究員 5 40〜58
フェロー(特任助教 5 50 (77) 100
特任助教 2 40〜58
特任研究員 3 30 50
特任研究員 3 規程による
特任助教 4 35
サポート・アストロノマー 3 36.2
特任助教 5 助教相当
特任准教授 5 准教授相当
特任助教 5 規程
特任助教 5 規程
特任助教 5 助教相当
特任准教授 5 准教授相当
特任研究員 4 30
プロジェクト研究員 3 30
ポストドクトラルフェロー 1 27
研究員 2 30
研究員 2 規程による
研究員 3 規程による
招聘職員 3 規程による
特任研究員 2 規程による
プロジェクト研究員 1 規程による
研究員 3 30
博士研究員 2 25〜40
特定研究員 2 規程による
特任研究員 2 30〜36
研究員 3 助教相当
主任研究員 3 准教授相当
特任助教 2 規程による
特任研究員 2 30
研究員 5 30
特任助教 4 規程による
特任研究員 2 33
研究員 3 30
特任准教授 6 規程による 70
特任准教授 6 規程による 70
特任助教 6 規程による 70
特任助教 5 規程による 70
特任准教授 6 規程による 70
特任助教 6 規程による 70
特任講師 5 規程による 70
特任准教授 5 規程による 70
特任助教 5 規程による 70
特任講師 5 規程による 70
特任助教 5 規程による 70
特任准教授 6 規程による 70
研究員 5 37.5 50
研究員 5 37.5 50
研究員 5 37.5 50
研究員 5 37.5 50
研究員 5 37.5 50
ポスドク研究員 3 34
特任研究員 4 37
特任教員 4 31〜37

この表の読み方は人によって色々だと思うのですが、いくつか注意点があります。

  1. 天文学会に流れる公募情報ということで、天文台関係の公募が多数(月給 30 万 + 研究費 50 万とか)
  2. ポスドク」と言っても、パッと見で「これは研究職ではないな」というものは除外(技術支援員とか広報とか教務補佐員の名称で、職務内容に「研究」についてほとんど触れていないようなもの)
  3. 後ろのほうにある研究費を 70 万とか 50 万支給するやつは、全部名古屋大のリーディング大学院関係
  4. 理研の募集は、給料に加えて住宅手当ありのものがあった (金額不明)
  5. 時給で支払いの職の場合、社会保険とかつかないものあり
  6. 助教相当」や「規程による」とあるものは、公募情報には月給があらわに書いていないもの
  7. 特任助教で「助教相当」とか「規程による」となっているものは、実際には助教 (年齢によるけど国立大だと恐らく年 600 万弱以上) より少し悪いと思われる
  8. もっと低い給料のものは、そもそも公募に出さないで関係者のみで情報が回る場合もあり

研究職ではないものは除外しましたが、広報だとかサーバ管理だとかそういう仕事だと、月給 20 万円代は結構あります。

TENNET に流れる公募だと、研究員という肩書きの場合は 30〜40 万円くらいが相場のようです。年収 360〜480 万円くらいですね。

こういうポスドクの他に、給料の良いポスドクというのがいくつかあります。僕が関係するようなものや近隣分野 (天文、物理、宇宙、素粒子宇宙線原子核など) だと、学術振興会特別研究員 PD (学振 PD)、同 SPD (学振 SPD)、同海外特別研究員 (海外学振)、理化学研究所基礎科学特別研究員 (基礎特研)、JAXA 任期付プロジェクト研究員、日本原子力研究開発機構博士研究員が挙げられます。一般的には、これらのポスドクのほうが給料が良いです。特殊なものとして、宇宙科学研究所 (ISAS) の International Top Young Fellowship (ITY) という制度もあり、これは海外からも優秀な人材を獲得する狙いがあるので、破格の給料です。

名称 任期 月給 年間研究費 その他
学振 PD 3 36.2 150 (最大、普通は 100 くらい) 社会保険雇用保険通勤手当なし
学振 SPD 3 44.6 300 (最大、普通の金額は知らない) 社会保険雇用保険通勤手当なし
海外学振 2 43.8 社会保険雇用保険通勤手当なし、科研費申請資格なし
基礎特研 3 48.7 100 住宅手当あり (噂だと 5 万円くらい)
JAXA 3 40.36 業績手当あり (支給状況は知らない)
原研 3 42 住居手当、業績手当あり (支給状況は知らない)
ITY 3 (最大 5) 79.1 250 住居手当あり (支給状況は知らない)

ITY を別として、給料と研究費の面では基礎特研がずば抜けてます。ちなみに僕は D3 のときに応募して落ちました。そもそも、その年に博士論文は出せませんでしたが。

学振 PD は一見すると平均的なポスドクより良いように見えますが、学振と雇用関係にないため社会保険がなく、国保国民年金に自分で加入しなくてはいけません。妻子持ちだったりすると、これだけで月額 5 万円はいくんじゃないでしょうか (自分はいくら払っていたか忘れました)。通勤手当もないので、必然的にチャリ通もしくは徒歩通勤になります。ただし、学振 PD の最大の魅力は上司のプロジェクトに縛られず、自分の好きな場所で好きな研究をできることですので、これは他の普通のポスドクにはない自由さです。

海外学振はそこそこ良いように見えますが、海外への引越し費用も出ませんし、配偶者が一緒に渡航する場合は配偶者は現地で労働できない場合が多いです。共働きの夫婦の場合、世帯収入で考えると海外学振は微妙な選択かもしれません。ただ、これまた好きな国、好きな研究者のもとで研究できるので、これは最大の魅力です。海外学振を経験した人の文句で一番多いのは、二年間の任期は短過ぎるというものです。現地で生活に慣れるのに数ヶ月はかかりますし、色々な事務手続きが多くて時間を消耗します。それが済んだと思ったら、もう次の職探しです。

おまけで、国立大学の助教の給料っていくらなのよと気になる人もいるでしょうから、最後まで読んでくれた人のために書いておくと、32 歳の名大の助教の初年度の年収は 600 万円ちょうどくらいでした。実際には着任半年後の 4 月から海外学振に出ているため、名大からの給料が減額されているので少ないですが、日本に居続けたと仮定すると 600 万ちょうどくらいです。これは住宅手当、賞与、扶養手当、大学院指導手当を含み、税と保険が引かれる前の金額です。震災復興なんたらで減額されているので、本当だったらもう少しだけ多いのかな。

PyVISA + NI-VISA + 32 bit Python を Mac で使う

(追記 2014.6.9) 最近の NI-VISA は OS X でも部分的に 64 bit 対応になっているので、通常使用の範囲であれば 32 bit の Python を無理やり使う必要はありません。
Python から USB 接続の実験装置を動かすときに、PySerial はよく使うんですが、VISA という規格もあって、PyVISA というので制御できます。GPIB と USB は備えてるけど GPIB を Mac で動かすのは面倒だし、かつその USB は PySerial で動かないしなんて装置があった場合、PyVISA を使うという手があります。

あと、LAN 接続も可能な機種だと PyVXI11 を使ったりなんてのも可能です。ただ、環境によっては IP 貰えなかったりすることがあるので、PyVISA を使うという解を持っているのは良いことです。

Mac の場合、まずは VISA の library が必要になります。Mac 用の VISA library は恐らく National Instruments (NI) が出しているやつしかなくて、NI-VISA をいうのを使うことになります。Mac 版の最新版は 5.4 です。

.dmg を落としてきて、Mac に install しましょう。10.7 と 10.8 に対応しています。10.9 は試していません。で、ちょっと問題があって、NI-VISA の Mac 版は 32 bit にしか対応していないので (10.8 のみ?)、PyVISA を呼ぶ Python は 32 bit のものを使わないといけません。でも PyROOT とかは 64 bit で動かしたいし、PyVISA のためだけに他の Python 関連のものを全て 32 bit にするのも敗北感があるので、PyVISA だけ 32 bit で動かしたい、と。

1. NI-VISA を入れる

さっきも書いたように、NI-VISAMac に入れます。/Library/Frameworks/Visa.framework/ に色々と入ります。

2. PyVISA を入れる

$ sudo easy_install pyvisa

これで PyVISA が入ります。

3. PyVISA + NI-VISA を試す

普通に MacPython を起動すると、64 bit のものが起動するはずです。32 bit のものを明示的に起動させるには、次のようにします。

$ VERSIONER_PYTHON_PREFER_32_BIT=yes python

さて、Tektronix の AFG3251 という function generator で実験してみます。

from pyvisa.vpp43 import visa_library
visa_library.load_library("/Library/Frameworks/Visa.framework/VISA")
import visa

afg3251 = visa.Instrument("USB0::0x0699::0x0344::C020398::INSTR")
afg3251.write("*IDN?")
print afg3251.read()

PyVISA が NI-VISA の library を自動で見つけてくれないため、明示的に visa_library.load_library で load する必要があります。これをやらずに import visa をすると、ちゃんと動いてくれません。

その後、VISA の接続に必要な USB の情報を与えてやると、その USB 機器に接続できます。AFG3251 の場合は、本体のメニューを操作すると "USB0::" という情報が出てきます。

後は RS232C の制御と同じような感覚でコマンドを送信するだけです。Delimiter などのややこしい設定は考える必要がありません。

ここここを参考にしました。

4. subprocess.Process

さて、これだと 32 bit の Python でしか動かないので、64 bit で動いている PyROOT と一緒に使うのは面倒です。ということで、subprocess.Process を使って別の process で動かします。Function generator のように低速な機器であれば、これで全く問題ありません。オシロのように転送速度が効いてくる装置の場合、PyVXI11 などを検討したほうが良いでしょう。


まずは、afg3251.py という script を用意します。これは単純に、第一引数を AFG3251 に送信し、返事を返すことを期待するコマンドであれば stdout にその結果を出力する動作をします。

#!/usr/bin/env python

import sys
command = sys.argv[1]

from pyvisa.vpp43 import visa_library
visa_library.load_library("/Library/Frameworks/Visa.framework/VISA")
import visa

afg3251 = visa.Instrument("USB0::0x0699::0x0344::C020398::INSTR")
afg3251.write(command)

if command[-1] == "?":
    sys.stdout.write(afg3251.read())

このファイルは chmod で実行権限を与えておいて下さい。

$ chmod +x afg3251.py

次に、process.py を用意します。これは思いっきりここの真似ですね。32 bit の Python を別 process で起動するため、os.environ に VERSIONER_PYTHON_PREFER_32_BIT を設定しています。これを設定しておけば、subprocess.Popen で別の Python を開いても 32 bit で起動してくれます。

import subprocess
import os

class AFG3251(object):
    def __init__(self):
        pass

    def excecute(self, command):
        os.environ["VERSIONER_PYTHON_PREFER_32_BIT"] = "yes"

        args = ["./afg3251.py", command]
        logfilename = {"stdout" : "./stdout.log", "stderr" : "./stderr.log" }
        logfileobj = {}
        mode = "w"

        for stream, log in logfilename.iteritems():
            try:
                logfileobj[stream] = file(log, mode)
            except IOError:
                print "Cannot open logfile: %s" % log
                sys.exit(1)

        subproc_args = { 'stdin'     : None,
                         'stdout'    : logfileobj['stdout'],
                         'stderr'    : logfileobj['stderr'],
                         'close_fds' : True,                 }

        try:
            p = subprocess.Popen(args, **subproc_args)
            del os.environ["VERSIONER_PYTHON_PREFER_32_BIT"]
        except OSError:
            print "Failed to execute command: %s" % args[0]
            sys.exit(1)

        ret = p.wait()
        stdout = open(logfilename["stdout"]).read()
        stderr = open(logfilename["stderr"]).read()

        return (stdout, stderr, ret)

afg3251.py 内部で発生した stdout の出力を process.py でそのまま受け取ることはできないので、一度 stdout.log に吐いています。AFG3251 からの応答を見たければ、このファイルを覗けば出力が分ります。

後は、好きなように改造するだけです。

Mavericks でやったこと、気付いたこと

X11

X11 を立ち上げると window manager が twm になってしまっていたので、XQuartz 2.7.4 を入れ直した。これで twm になる問題は解消。ROOT の build で libX11 が見つからないと怒られるのも、XQuartz の入れ直しで解消した。

ROOT

5.34/11 から Mavericks 対応になったので、build し直して入れた。5.34/10 も、Mountain Lion で build したやつはちゃんと動作してたっぽいけど、気持ち悪いので 5.34/11 を使うことに。

ds9

最初 ds9 が立ち上がらなかったけど、XQuartz の入れ直しでこれも立ち上がるようになった。

MacPorts

MacPorts 2.2.1 の Mavericks 対応のものが出たので、これで入れ直し。/opt は一度削除して、たいした手間ではないので、必要な package は全部入れ直すことにした。

入れたものは以下の通り。あんまり入れてない。

Mail.app

GmailIMAP 連携がわけの分からんことになった。以前は "All" (違うかも) だったか何かに入ってたメールが、ごっそり "archive" というところに持ってかれた。移動してないのもある。

全体

なぜか SSD の空き領域が 20 GB も増えてた。えーと、何を消去したんですかね。なんか要らないものを捨ててくれるのはありがたいんだけど、そもそも Mountain Lion って、それ単体だけでも 20 GB も無いんじゃないかと思うのだけど。

めっちゃスクロールがカクカクしてる。2012 の 15" Retina の 16 GB なので、性能としては問題ないと思うのだけど。

游明朝と游ゴシックはたいして良くない。ヒラギノも丸ゴ以外はいまいちなので、うーむ。