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基礎科学関連の「事業仕分け」と一連の騒動 (5)

財務省から『平成22年度予算政府案』が発表されました。その中でも、文教・科学技術予算というのが、今回の「事業仕分け」結果を反映した基礎科学関連の予算案です。こちらに概算要求の額や事業内容の説明があります。あれだけ騒いだ結果はどうなったかというと、以下のような結果になりました*1 *2

H21 (億円) H22 (億円) H22概算要求額 (億円) 増減 (億円/%) 備考
国立大学法人運営費交付金 11,695 11,585 不明 -110/-0.94
私学助成 4,456 4,390 不明 -66/-1.5
科学研究費補助金 1,970 2,000 不明 +30/+1.5
戦略的創造研究推進事業 498 505 505 +8/+1.5
特別研究員事業 163 167 170 +4/+2.6
先端研究開発戦略的強化費補助金(仮称) N/A 400 不明 +400/N/A 新規
スパコン 190 228 267 +37/+19.7 事業仕分けの評価結果を踏まえ、計画を大幅に見直し、開発側から利用者側へ視点を転換するとともに、開発の加速に伴う追加経費を削減するなど事業を見直して推進。

スパコンはなんだかんだで概算要求額からたったの40億円減で済んでしまいました。特別研究員も、概算要求を満額は取れなかったものの、昨年度に比べれば増額。そして研究の中心となる科研費も増額です。大学の運営費は国立私学ともに減少となっています。合計額で見れば、ほとんど変わりません。

翻って我が国の税収はというと、ご存知のとおり大幅に落ち込んでいるわけです。基礎科学の予算が昨年度とほとんど変わらなかったというのは、赤字国債に大きく依存しているからです。研究者はこの異常な状態に対して、

一方で、次世代スーパーコンピューターの開発主体である理化学研究所の中川建朗経営企画部長は「正直、ほっとした。厳しいことに変わりないが、いいものを造りたい」と表情を緩めた。(読売 09.12.26付け)

「ほっとした」と言っている場合ではなく、やはりどうやって少ない予算を効率良く成果に繋げられるかを考えないといけません。

もしスパコン予算の縮減が本当に某先生方の仰る「暴挙」であるならば、彼らはまだ声を上げ続けるべきです。声が聞こえなくなったということは(マスコミに報道されないわけではなく、実際に大学でも昔の話になりつつあります)、「仕分け」結果を真摯に受け止め始めたということでしょう。むしろ、「世界一」という悪い意味でのプレッシャーがなくなって良かったんじゃないでしょうか。

私が来年4月からお世話になる、そして2005〜2007年度でもお世話になった学振の特別研究員事業は、昨年度よりも増額になりました。実質的に「給料」に相当する「研究奨励費」の額は、この不景気にも関わらず何年間も変動なしです。民間の給料が変動するんですから、経済実体に合わせてもっと減額したっていいのではないかと思います*3

最終的な予算に対する個人的な感想は、「結局大してなにも変わらなかったな」です。20年後に自分たちの世代が研究代表者になるようなときまでには、自分たちでもっと無駄を省けるような研究環境に変えていかないといけません。

ところで、特別教育研究経費は一体どうなったんでしょうか。「すばる」望遠鏡やKEK、神岡の運営がどうなるのか、その後情報が出てきません。

*1:上記リンクから、額の大きいものを私が手でまとめたものです。打ち間違い、計算ミスなどの可能性あり。

*2:SPring-8の結果は発見できず。

*3:国家公務員(やそれに準ずる職の人)の給料は、景気に合わせて変動します。ただし、好景気のときの伸び率は小さく、また不景気のときの減りも小さくなっています。景気に左右されるものの、民間ほど大きくは変動しないということです。