DVD の CSS 解除は適法です (ただしCSS に限る)

2012 年 10 月 1 日から違法になりました

今更感のある話題ですが、自分用のまとめ。DVD には CSS という「プロテクト」がかかっていて、単純に DVD-R に焼いたり HDD にコピーしたりすることはできません。CSS を解除するための手段をとらない限り、CSS を解除するための鍵自体がコピーされないからです。

この CSS を解除するのが違法か適法かというのは DVD のパソコン視聴が一般的になった 2000 年代初頭から議論のあるところで、CSS を「コピーコントロール技術」だと解釈すると著作権法違反になり、また「アクセスコントロール技術」であると解釈すると適法だと言われています。

自分は法律の専門家ではないので法の解釈は詳しく知りませんが、朝日中央綜合法律経済事務所グループというところが運営している法律相談のページによると、

Q. CSS という暗号技術が施された DVD を特定のソフトを使って DVD-R にバックアップしようと思うのですが、著作権を侵害することになりますか
【 回答 】
1. 私的使用のための複製
著作物をコピーすることは、原則として著作者の有する複製権(著作権法21条)を侵害することになります。
しかし、私的使用のための複製は、著作権者の許諾を得ることなく行うことができるとされています(著作権法30条1項)
2. 技術的保護手段の回避による複製
技術的保護手段を回避して複製する場合には、私的使用のための複製であっても、著作物を複製することはできません(著作権法30条1項2号)。
CSS という技術は、コピーをコントロールする技術ではなく、アクセスコントロールする技術と解されており、技術的保護手段ではないと一般的には解されています。
そのため、バックアップという私的使用の範囲内の複製であれば、著作権を侵害することにはならないと解されます。

とあります。どうやら専門家に言わせても適法のようです*1 *2。恐らく、レンタル DVD にも同じ議論が適用できるはずです。

世の中には最近「〜〜知恵袋」みたいな質問用掲示板が多々ありますが、そういう場でのこの手の質問に関しては、法律の素人が各自の思い込みや損得で回答しているものが多く見られます*3。上記ページのように、法律の専門家の「解釈」*4が述べられているのは、非常に有用です。

DVD のコピーが駄目だとか、著作権者がうんぬんという議論を関連業界が本気でやるのであれば、まずはレンタル CD を禁止すべきですね。デジタル技術が進歩しすぎ。

こことかここにも似たような議論はあります。前者だと、Macrovision を解除するのは違法とあります。また後者では、

著作権法で規制されていない場合でも、不法行為責任(民法709条)と判断されることもあります。ルールに違反しなければ何をやってもよいというのは悲しい考え方です。作っている人には敬意を払うべきだし、ユーザー自身が法律だけでなく道義的にも判断すべきでしょう。

玉虫色の結論にして、「我々は責任は取らないよ」という結び方をしています。ややこしい。

結論として、DVD のコピー全般が違法なのか適法なのかはよく分かりません。少なくとも、CSS の解除は問題ではない。「個人の所有物以外はコピー禁止」と法律で決まっていれば解釈が楽で問題にならないのに。

あと、こういうの書いたからって、「東大の研究者が DVD のコピーの幇助!」とか無駄に騒がないで下さいね。そいういう人に付き合うの面倒ですから。

追記 (2010.3.13)

文科省の解説を発見しました。

他方、CSS、CAS、HDCP等のアクセスコントロール機能のみの技術についてそれを回避する装置・プログラムに関しては、現行の著作権法における規制の対象とはならない。しかし、現在では、DVDビデオにおいて、CSSだけではなくCGMSやマクロビジョンを付加することで、コピーコントロール機能の付加を行っている例もある。そのような場合には、コピーコントロールの回避に関しては、著作権法における技術的保護手段の規制が及ぶと解すべきである。

ということなので、CSS 解除は OK です。購入やレンタルした DVD を私的利用の範囲内で複製することは認められます。


*1:ただし、現行の著作権法で日本国内に限ります。

*2:当然、コピーしたものを人に譲渡・販売などするのは「私的使用」を逸脱します。

*3:DVD の話に限らず、間違った回答を素人が得意げに垂れ流す構図を沢山見かけます。明確に間違いな回答には、第三者が減点できる仕組みを設けて欲しいものです。

*4:まだ裁判所での判例はないので、もし DVD コピーに関する裁判が将来的に起きた場合に、違法認定される可能性は残ります。