揖保の糸の特級品が凄い!

Palo Alto に来てから 8 ヶ月経ち、家では基本的に日本的な味付けの食事をしているものの、日本恋しさのせいか、何故か素麺が大流行している我が家。二週間に一度くらいの頻度で食べています。

うちで食べるときは決まって揖保の糸です。こっちで買えるのは、揖保の糸の上級品。赤帯のものです。先日、数日だけ日本に一時帰国した折りに、実家の近所で揖保の糸の特級品を見つけたので食べ比べてみました。

揖保乃糸 上級品 6kg(120束入)

揖保乃糸 上級品 6kg(120束入)

手延素麺 揖保乃糸 特級品 ひね 2kg 40把 黒帯

手延素麺 揖保乃糸 特級品 ひね 2kg 40把 黒帯

0. 他の会社の安い奴

揖保の糸は少し値段がお高いので、二ヶ月ほど前に安い素麺を買ってみました。讃岐そうめんとかいう奴で、$3 くらいだったか。結論は、これは素麺じゃなくて冷や麦。讃岐はうどんを作っておけ、と。揖保の糸を食べたときの、あのチュルチュルチュルーという触感が全くない。他の会社の高級品は食べたことないですが、ともかく安物は回避推奨

1. 揖保の糸

1.1. 揖保の糸について

先におさらいしておくと、揖保の糸にはいくつか階級があります。揖保の糸は特定の会社が製造しているわけではなく、兵庫県手延素麺協同組合というところが、組合員である素麺職人の商品をまとめて販売しています。機械で作るのではなく、手延べ素麺であり、職人の技術によって味が左右されうるものだという前提知識が必要。

揖保の糸の公式ページで詳細な階級の説明が載っていますが、いくつか抜粋します。製造時期と麺の太さ、使用している小麦に違いがあります。


▲ 上級品 (赤帯)。普通に売っているやつです。通常品の時点で「上級」を名乗っているあたり、こだわりを感じます。50g/約400本。


▲ 特級品 (黒帯)。厳寒期 (12月〜翌年2月) のみに作り、上級品よりも細目です。50g/約480本。


▲ 三神 (黒帯)。1 月のみの製造で、選抜された指定業者のみが製造可能という揖保の糸の最高級品。50g/約550本。


▲ ばち。素麺を延ばしたときにできる、端っこの部分。

さらに、最初の三つには通常品とは別に「ひね (古)」と呼ばれるものがあり、一年間寝かせたものだそうです。素麺は寝かせると美味しいとよく言いますね。

1.2. 揖保の糸 上級品

Palo Alto 近くのスーパー*1で一番高級な素麺は、揖保の糸の「上級品」です。こっちで $4〜$5 くらい。日本で買うと 350円 くらいです。

安物の素麺と食べ比べると、素麺を食べる喜びが感じられます。素麺の舌触り、細さ、口に吸い込まれるときのチュルチュル感、細いくせにしっかりとしたコシ。さすが揖保の糸です。せっかく素麺を買うなら、少し高くても安物ではなく揖保の糸を押さえておきたい。夏休みの小学生の昼飯という扱いではなく、大人の食べ物として揖保の糸はお勧め。この上級品は★★★☆☆です。

ちなみに、我が家では麺つゆの中に梅肉を落として食べます。適度な梅干しの酸味としょっぱさが絶妙です。麺つゆは薄めずに濃いものを使っています。何度も使ううちに水が混じって、麺つゆが薄くなるのが嫌いなためです。

1.3. 揖保の糸 特級品

先日の帰国の折り、実家の近所のスーパーで見つけたため、話のネタにと思って買ってみました。店頭価格で 500 円強だったので、上級品の 1.5 倍くらいの値段です。いつも特級品を買うには、少しためらう値段です。Palo Alto に戻って、早速、上級品と食べ比べてみました。

上級品も特級品も、どちらも 1 分半の茹で時間にしています。しかし、最初に特級品を口にした瞬間、茹で過ぎたのかと感じました。唇に触れた瞬間の感触があまりにも柔らかいからです。ところが、口の中に入った瞬間に茹ですぎではないことが分かります。上級品と比べ、その麺の細さのせいで口内での抵抗がありません。揖保の糸のチュルチュル感が何倍にも増した状態です。そして麺を噛んでみると、細いくせにしっかりとしたコシがあります。

今まで上級品と安物を食べ比べた時の印象と、全く同じことが上級品と特級品の差として言えます。特級品に比べてしまえば、上級品は太くてゴワゴワしており、口の中で邪魔な存在になります。麺の噛み応えも、一本一本がブツブツとした歯触りです。特級品は「柔にして剛」、「口の中でとろけるような」という形容が当てはまります。素麺なんで、口の中でとろけるわけないんですけどね。

これは文句なしで★★★★☆。いやー、良い仕事してる、揖保の糸。こういう文化は大切にしないといけない。はっきり言って、特級品を知ってしまった今、上級品はあまり食べる気になりません。1.5 倍の価格差も納得できます。

1.4. 試していないもの

特級品のさらに上を行く三神。これはスーパーじゃ売っていないっぽく、贈答用の化粧箱しかなさそう。値段も特級品のさらに倍以上するっぽいです。それと「ひね」も試してみたいが、これも贈答用っぽい。三神も「ひね」も通販で入手可能なものの、ちょっと気軽に買える値段ではない。けどそのうち買う、絶対。

面白いのが、素麺を延ばすときのはじっこの部分のばち。味噌汁にすると美味しいらしいです。

*1:いつもマリナフーズというところで素麺は調達