読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『A Dictionary of Astronomy』『オックスフォード天文学辞典』

『A Dictionary of Astronomy』は、自分のお気に入りの天文学の辞典で、Oxford から出版されています。朝倉書店から日本語訳も出ています。

なぜ、お気に入りかというと、「Time」の説明がすっきり明快な表現だったから。

The dimension that allows occurring events at the same place to be distinguished. (以下略)

日本語版の朝倉書店『オックスフォード天文学辞典』での「時間」の項の日本語訳は、次の通り。

時空の同一の場所で起きた事象に区別の余地を残す次元。 (以下略)

もちろん、この説明だけでは「時間」の全てを表現できません。しかし一行だけで説明しろと言われたら、上記の文は秀逸だと思います。

Oxford から出ている原著は、既に第二版が出ています。2007 年の出版なので、比較的最近の項目も載っています。身近な分野で言うと、例えば GLAST (現 Fermi) であったり、VERITAS であったり。日本語版のほうは原著の 5 倍以上の値段なので、英語にアレルギーさえなければ原著が良いと思います*1

この辞典の原著の良いところは沢山あります。

  • $15 と安い (Amazon.co.jp でも 1,500 円しかしない)。
  • paperback なので軽くて小さい。
  • かなり平易な英語で書かれている。
  • 2007 年に第二版が出版されたので、内容が新しい。
  • 項目数が多い。
  • 「Time」の説明が素敵。

逆に不満な点もいくつかあります。

  • 「Astronomy」の辞典であり、「Astrophysics」の項目が弱い気がする。
  • 前項に同じく、宇宙線関連の語が少ない。例えば VERITAS は SAO (Smithsonian Astrophysical Observatory) の管理のため掲載されているものの、HESS、MAGIC、CANGAROO、HEGRA は載っていない。Kamiokande もない。GZK cutoff もない。
  • あくまで辞典なので、少し突っ込んだ内容を知りたいと思うと他の書籍、文献にあたる必要がある。もう少し詳しくても良いかな。
  • 掲載されている物理量の原典が引用されていない。
  • 高い、でかい、重い (日本語版のみ)。

総じて、この辞典はお薦めです。いくつか不満点があるので、その分を差し引いて★★★★☆。天文もしくは宇宙物理系の大学院生や研究者であれば、原著が手元に一冊あっても良いと思います。最近はなんとなく専門用語も Wikipedia で調べることが多くなってしまったのですが、やはり専門書で調べたいものです。少なくとも宇宙線分野における日本語の Wikipedia は信用できません。

*1:自分の場合は D1 のときに日本語版を買ったのですが、Stanford への引っ越しのときに USPS に紛失されました。そのため、今回原著の第二版を買い直しました。