国際会議論文で使用した図の投稿論文での再利用

国際会議の proceedings paper の執筆と、学術誌への査読論文 (full paper) の投稿がほぼ同じ時期に発生したり、投稿論文の作成が後になるということは多々あると思います。このような場合、両者で同一の図を使いまわすと問題の発生する場合があります。

  1. 同じ内容を新規性のある研究成果として複数箇所で発表することは二重投稿や自己剽窃とみなされる場合があり、研究倫理上好ましくない。
  2. 論文として図が掲載される場合、その図の著作権の帰属先が著者ではなく出版社の場合があるため、異なる出版社に同一の図の権利を渡すことはできない。
  3. 論文で使用する図は、世の中に先に出たものが原則として原典になるため、後から出版された同一の図は、原典を引用するべきである。

投稿論文が先に出て、その図を国際会議の proceedings paper で再利用することは、出典を明記さえすれば著者の権利として認められている場合が多いようです。もし図の著作権を出版社に譲渡していても、proceedings paper などで再利用できるという説明が多くの出版社から出ています。

しかしその逆で、proceedings paper が先に出てしまっており、投稿論文でその中の図を再利用したい場合にどうすれば良いかは、出版社の website を見ても明記されていないようです。上記の問題を回避するためだけに、似ているけど同一ではない図を作り直すのも馬鹿らしい作業なので*1、投稿論文を受け取る出版社側としてはどのような著者の行動を望むのかを編集部に問い合わせ、これまでいくつか実践してみましたので、まとめます。それぞれ追加した文は、編集部の指示に従ったものです。

これまでの経験では、proceedings paper から full paper への図の転載はどれも認めてもらえました。もちろん出版社や、同じ出版社でも編集部によって対応が異なる可能性があるので、心配な場合はその都度問い合わせると良いでしょう。

SPIE から IOP Publishing (OA) の場合

  • 転載元:SPIE の proceedings paper (著作権が SPIE に帰属)
  • 転載先:IOP Publishing の OA (著作権が著者、CC BY 3.0 で配布)
  • 図の中身:使い回ししやすい、実験装置の写真

" [11] (© (2014) COPYRIGHT Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers (SPIE), see reference for details)"

という文を追加。

Website の図から IOP Publishing (OA) の場合

  • 転載元:自分の所属する実験グループの website (CC BY 4.0)
  • 転載先:IOP Publishing の OA では著作権が著者にあるが CC BY 3.0 で配布
  • 図の中身:使い回ししやすい、実験装置の CG

"(reproduced from [1] under CC BY 4.0, credit: G. Pérez, IAC, SMM)"

という文を追加。

PoS から IOP Publishing (OA) の場合

  • 転載元:Proceedings of Science の OA (著作権は著者、CC BY-NC-SA 4.0 で配布)
  • 転載先:IOP Publishing の OA (著作権が著者、CC BY 3.0 で配布)
  • 図の中身:使い回ししやすい、実験装置の CG

"The figures are taken from [16] (reproduced under CC BY-NC-SA 4.0, see reference for details)."

という文を追加。

PoS から Elsevier の場合

  • 転載元:Proceedings of Science の OA (著作権は著者、CC BY-NC-SA 4.0 で配布)
  • 転載先:Elsevier (著作権が Elsevier に帰属)
  • 図の中身:シミュレーション結果

"((d)–(i): Taken from [29])." や "This figure was taken from [29]. "

という文を追加。ただし、改めて考えてみると、"CC BY-NC-SA 4.0" であることを明記するべきだったのではないかと思う。

PoS から IOP Publishing/AAS

  • 転載元:Proceedings of Science の OA (著作権は著者、CC BY-NC-SA 4.0 で配布)
  • 転載先:IOP/AAS (著作権が AAS に帰属)
  • 図の中身:シミュレーション結果

元の図が CC なので、それを明記すれば転載して良い (ただし最終的に転載しなかった)。

*1:現実には、そんな問題は考えもしないで、平気で複数箇所で同じ図を使い回す研究者がうちの分野では多数派です。