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研究者を目指す大学院生なら知っておきたい、天文分野のポスドクの給料の相場

研究 アカポス


学振 PD が任期 4 年間になるだとか、国立大学教員の給料が年俸制に移行するだとかというニュースを目にして、前々から気になっていたポスドクの給料の相場がどんなものか調べてみました。

日本天文学会には TENNET というメーリングリストがあり、その内容は公開されています。そこに流れる情報の数割は公募情報なので、過去ログを漁るとポスドクの給料の情報が分かります。こういう情報は若手研究者や大学院生にとってとても重要なのに、あまりまとめられていない気がするので誰かの役には立つでしょう。もしかしたら大学院進学を断念する理由にもなるかもしれない。

ざっと 1 年分くらいを眺めて、まとめたものが次の表です。特任助教と特任准教授も「ポスドク」に含めましたが、ここでの「ポスドク」の定義は「退職金や賞与のない職」です。なぜ含めたかというと、特任助教や特任准教授 (大学によって「特定」だったり「特命」だったりもします) は給与形態が助教や准教授と大きく異なる場合があるからです。

表の後ろに色々と大事なことが書かれているので、スクロールしてください。

肩書き 任期 (延長含) 月給 (万円、括弧内は海外勤務の場合) 年間研究費 (万円)
特任助教 5 助教相当
特任助教 5 助教相当
特任准教授 5 准教授相当
特任研究員 3 30 50
非常勤研究員 2 30 小額
特任助教 4 30
特任准教授 5 50
研究員 4 30 50
研究員 3 規程による
特任助教 3 規程による
特任研究員 2 33
特任研究員 3 30 50
プロジェクト研究員(特任研究員) 3 30 (52) 50
研究員 5 40〜58
フェロー(特任助教 5 50 (77) 100
特任助教 2 40〜58
特任研究員 3 30 50
特任研究員 3 規程による
特任助教 4 35
サポート・アストロノマー 3 36.2
特任助教 5 助教相当
特任准教授 5 准教授相当
特任助教 5 規程
特任助教 5 規程
特任助教 5 助教相当
特任准教授 5 准教授相当
特任研究員 4 30
プロジェクト研究員 3 30
ポストドクトラルフェロー 1 27
研究員 2 30
研究員 2 規程による
研究員 3 規程による
招聘職員 3 規程による
特任研究員 2 規程による
プロジェクト研究員 1 規程による
研究員 3 30
博士研究員 2 25〜40
特定研究員 2 規程による
特任研究員 2 30〜36
研究員 3 助教相当
主任研究員 3 准教授相当
特任助教 2 規程による
特任研究員 2 30
研究員 5 30
特任助教 4 規程による
特任研究員 2 33
研究員 3 30
特任准教授 6 規程による 70
特任准教授 6 規程による 70
特任助教 6 規程による 70
特任助教 5 規程による 70
特任准教授 6 規程による 70
特任助教 6 規程による 70
特任講師 5 規程による 70
特任准教授 5 規程による 70
特任助教 5 規程による 70
特任講師 5 規程による 70
特任助教 5 規程による 70
特任准教授 6 規程による 70
研究員 5 37.5 50
研究員 5 37.5 50
研究員 5 37.5 50
研究員 5 37.5 50
研究員 5 37.5 50
ポスドク研究員 3 34
特任研究員 4 37
特任教員 4 31〜37

この表の読み方は人によって色々だと思うのですが、いくつか注意点があります。

  1. 天文学会に流れる公募情報ということで、天文台関係の公募が多数(月給 30 万 + 研究費 50 万とか)
  2. ポスドク」と言っても、パッと見で「これは研究職ではないな」というものは除外(技術支援員とか広報とか教務補佐員の名称で、職務内容に「研究」についてほとんど触れていないようなもの)
  3. 後ろのほうにある研究費を 70 万とか 50 万支給するやつは、全部名古屋大のリーディング大学院関係
  4. 理研の募集は、給料に加えて住宅手当ありのものがあった (金額不明)
  5. 時給で支払いの職の場合、社会保険とかつかないものあり
  6. 助教相当」や「規程による」とあるものは、公募情報には月給があらわに書いていないもの
  7. 特任助教で「助教相当」とか「規程による」となっているものは、実際には助教 (年齢によるけど国立大だと恐らく年 600 万弱以上) より少し悪いと思われる
  8. もっと低い給料のものは、そもそも公募に出さないで関係者のみで情報が回る場合もあり

研究職ではないものは除外しましたが、広報だとかサーバ管理だとかそういう仕事だと、月給 20 万円代は結構あります。

TENNET に流れる公募だと、研究員という肩書きの場合は 30〜40 万円くらいが相場のようです。年収 360〜480 万円くらいですね。

こういうポスドクの他に、給料の良いポスドクというのがいくつかあります。僕が関係するようなものや近隣分野 (天文、物理、宇宙、素粒子宇宙線原子核など) だと、学術振興会特別研究員 PD (学振 PD)、同 SPD (学振 SPD)、同海外特別研究員 (海外学振)、理化学研究所基礎科学特別研究員 (基礎特研)、JAXA 任期付プロジェクト研究員、日本原子力研究開発機構博士研究員が挙げられます。一般的には、これらのポスドクのほうが給料が良いです。特殊なものとして、宇宙科学研究所 (ISAS) の International Top Young Fellowship (ITY) という制度もあり、これは海外からも優秀な人材を獲得する狙いがあるので、破格の給料です。

名称 任期 月給 年間研究費 その他
学振 PD 3 36.2 150 (最大、普通は 100 くらい) 社会保険雇用保険通勤手当なし
学振 SPD 3 44.6 300 (最大、普通の金額は知らない) 社会保険雇用保険通勤手当なし
海外学振 2 43.8 社会保険雇用保険通勤手当なし、科研費申請資格なし
基礎特研 3 48.7 100 住宅手当あり (噂だと 5 万円くらい)
JAXA 3 40.36 業績手当あり (支給状況は知らない)
原研 3 42 住居手当、業績手当あり (支給状況は知らない)
ITY 3 (最大 5) 79.1 250 住居手当あり (支給状況は知らない)

ITY を別として、給料と研究費の面では基礎特研がずば抜けてます。ちなみに僕は D3 のときに応募して落ちました。そもそも、その年に博士論文は出せませんでしたが。

学振 PD は一見すると平均的なポスドクより良いように見えますが、学振と雇用関係にないため社会保険がなく、国保国民年金に自分で加入しなくてはいけません。妻子持ちだったりすると、これだけで月額 5 万円はいくんじゃないでしょうか (自分はいくら払っていたか忘れました)。通勤手当もないので、必然的にチャリ通もしくは徒歩通勤になります。ただし、学振 PD の最大の魅力は上司のプロジェクトに縛られず、自分の好きな場所で好きな研究をできることですので、これは他の普通のポスドクにはない自由さです。

海外学振はそこそこ良いように見えますが、海外への引越し費用も出ませんし、配偶者が一緒に渡航する場合は配偶者は現地で労働できない場合が多いです。共働きの夫婦の場合、世帯収入で考えると海外学振は微妙な選択かもしれません。ただ、これまた好きな国、好きな研究者のもとで研究できるので、これは最大の魅力です。海外学振を経験した人の文句で一番多いのは、二年間の任期は短過ぎるというものです。現地で生活に慣れるのに数ヶ月はかかりますし、色々な事務手続きが多くて時間を消耗します。それが済んだと思ったら、もう次の職探しです。

おまけで、国立大学の助教の給料っていくらなのよと気になる人もいるでしょうから、最後まで読んでくれた人のために書いておくと、32 歳の名大の助教の初年度の年収は 600 万円ちょうどくらいでした。実際には着任半年後の 4 月から海外学振に出ているため、名大からの給料が減額されているので少ないですが、日本に居続けたと仮定すると 600 万ちょうどくらいです。これは住宅手当、賞与、扶養手当、大学院指導手当を含み、税と保険が引かれる前の金額です。震災復興なんたらで減額されているので、本当だったらもう少しだけ多いのかな。