子供(10 歳未満)の感染経路はどうなっているか、20000 件超の感染経路図から考える

背景

4 月から開始した愛知・岐阜における新型コロナ感染経路の可視化は、既に報告件数 20000 件超を扱うようになりました。

oxon.hatenablog.com

このうち会食や職場など様々な感染経路が存在しますが、10 歳未満の子供の新型コロナの感染経路の実態はどうなっているのか。より個人的な観点からは、我が家の子供達が小学校や保育園で感染してくるか、また家庭内感染へと広がりうるのか。そういうことを実際の感染事例から概観してみたいと思います。

※1 この記事に書く内容は、あくまで愛知県、名古屋市豊田市岡崎市豊橋市岐阜県岐阜市の公開データに基づきます。そのため、症例の詳細や保健所や当事者しか知らない感染経路の本当のところは分かりません。
※2 これは医療関係者でも感染症の専門家でもなんでもない、素人の blog 記事です。
※3 10 歳未満に限っているのは、10 代を含めると(公開データが年代別になっており)18 歳以上の行動パターンと区別が困難になるためです。

国民の多くに新型コロナ対策が浸透し、それでもなお第 3 波が愛知県で広まり始めたのは 2020 年 10 月中旬のことです。このうち、11 月 1 日以降の陽性報告で陽性者の年齢が「10 歳未満」「0 歳」「1 歳未満」となっている事例と、それら事例に接触者・濃厚接触者として関連づけられている事例のみで、全ての感染経路図を作成しました。

かなり巨大な PDF として GitHub に公開しています。「2021-01-08(愛知、10 歳未満の子供を含むクラスターのみを表示)」というリンクがそれです。
github.com

PDF への直リンクはこちらです。
https://github.com/akira-okumura/COVID-19/raw/master/PDF/Aichi2021-01-08_kids.pdf

保育施設におけるクラスター事例

さてこのうち、保育施設で発生した大きいクラスターは 2 件のみです。小学校では自分の知る限り報道に出る規模のクラスターは発生していません。

クラスター 3E

1 つ目は愛知県がクラスター 3E と呼んでいる名古屋市の保育施設で発生したもの。これは職員と思われる 20〜40 代の方々と、施設利用者である 10 歳未満の子供たちで構成されます。ここで、報告順が左から並んでいるからといって、先頭の方がウイルスを持ち込んだかのように解釈しないでください。感染日と発症日と陽性確定日は人によって前後するためです。また線が繋がっているからといって接触している、感染させた、とは限りません。多数の線が出ているからといって「スーパースプレッダー」というわけでもありません。

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名古屋市保育施設(クラスター 3E)

このうち、施設職員と母親(と思われる)に繋がっている子供は 9 名中 1 名のみですが存在します。すなわち、もし施設内でまず感染が広がり、その後この子供が家庭内感染を起こしたとすると、感染をある場所から他の場所へ広げていることになります。逆に家庭内で先に感染が起き、その後施設内でクラスターを発生させた可能性もありますが、その場合もやはり、10 歳未満の子供が他の場所へ拡大させる役割を持つことが分かります。

この図からは少なくとも感染の上流がどちらであったかは判断つきません。しかし 10 歳未満の子供(おそらく 6 歳以下)が感染を他の場所へ移動することは間違いありません。

クラスター 3G

2 つ目は同様に名古屋市内の保育施設もしくは学校のクラスター 3 Gです。これも 3E と同様、20〜60 代の職員と思われる方々と子供たちで構成されます。ここでも 9 名の子供のうち 1 名は家庭内感染と繋がっているため、他の場所へと感染を拡大させる場合があることが分かります。

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名古屋市保育施設・学校(クラスター 3G)

クラスター 3G と 3E から分かること、分からないこと

クラスター 3E と 3G の事例の子供たちは家族構成が比較的似通っている(30〜40 代の両親もしくは片親、兄弟姉妹など)と考えられるため、このような家族構成の子供 18 事例中、ウイルスを他の集団に移動させたのは 2 事例だと言えます。ただし、他の家庭でも感染は起きていたのに、無症状かつ PCR 検査にかからなかった可能性は排除できません。

それぞれの施設内でどのように感染が広まったかは明らかになっていないため、子供達が遊ぶときに互いにベタベタ触ったのか、それとも子供や職員の飛沫感染が起きたのかは分かりません。しかし、子供から家庭感染への拡大が起きにくいことを考えると、子供から職員へ移したという可能性は低いのではないかと思います。親子の接触に比べると、子供と職員の接触は薄いためです。

大垣日大高校

ここで、10 歳未満ではありませんが、飲み会による感染を起こさないと思われる高校生のクラスター事例も見てみましょう。

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大垣日大高校クラスタ

学校内でどのように感染が広がったかは報道にありませんが、高校生と思われる 10 代の 28 名のうち、家庭内感染は 4 件のみです。小さい子供に比べると親子の接触は減っていると思われますが(経験談)、3G・3E の 18 事例中の 2 事例と同程度の、28 事例中の 4 事例です。

ただし、このクラスターは全部で 45 名いるはずなのですが、岐阜県の公表データからは 38 名しか経路図として接続できることができませんでした。7 事例が家庭内感染もしくは他の生徒の事例として隠れているかもしれません。

子供から子供へ移したと思われる事例

こちらの事例は、おそらく最初の 4 名は 3 世代の家庭内感染(濃厚接触)です。最後の 10 歳未満の 2 名は、このうち真ん中の 10 歳未満の 2 名との「関連からの検査」として公表されています。「関連からの検査」という書き方は、その濃厚接触ではないが、その発生した集団内になんらかの形で属していた場合に使われる表現です。同居家族であれば「接触」や「濃厚接触者」として書かれる場合が多いはずです。

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子供から子供へ移したと思われる事例

つまり、これら 4 名の 10 歳未満の子供たちは同じ集団に属しており、濃厚接触かどうかは追跡調査で判明しなかったものの、集団内で感染が起きたということです。その集団に大人がいるはずですが、大人への感染は確認されなかったと言えます。したがって、単純には 10 歳未満の子供同士で感染させ合う可能性があるということです。(インフルエンザでも学級閉鎖が起きるので当たり前ですが)

子供から複数の大人へ移したと思われる事例

こちらの事例では、中央の縦 1 列に 10 歳未満の子供が 3 名おり、これは先頭から繋がる何らかの集団(保育施設など)と思われます。

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子供から複数の大人へ移したと思われる事例

このうち 1 番下の女の子はこの左側の集団を含め 4 つの異なる大人へと繋がっています。つまり、4 つの集団のうちどれが感染の上流かは分かりませんが、子供を媒介として複数の集団へ感染を拡大させる場合もあるということです。

子供を 2 人経由して移したと思われる事例

こちらの例では、大人から子供に感染し、それが他の子供へ感染し、さらに大人へ移すという事例です。もし子供から大人は移りにくい、子供同士は移りにくいというのが事実だとしても、それらの低い確率を掛け合わせた事例というのも、これだけ感染者が増えてくると存在するということです。ただし稀です。

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子供を 2 人経由して移したと思われる事例

子供の感染の大部分を占める経路不明からの家庭内感染

多くの子供の感染事例のうち、頻繁に目にするのが感染経路不明の親(父親が多い)から家庭内感染をしたと思われる事例です。特にこれらの家庭(と思われる)を取り上げた理由はありませんが、典型例です。f:id:oxon:20210109175824p:plain

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父親が外からもらってきたのか、母親がもらってきたのかは発症日と感染日に時間差があるため、これらの図では分かりません。ただし、傾向として父親が先に陽性確定する事例が多いということです。

大きなクラスターの末端に子供がくる例

現在、愛知県内、岐阜県内では様々なクラスターが発生しており、当然そのようなクラスターに含まれる大人の中には、小さい子供を持つ方たちも多くいます。そのような場合、クラスターの末端に子供がくるというのもたまに見かけます。

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大きなクラスターの末端に子供がくる例

まとめ

当たり前ではありますが、子供から子供へも感染させる、子供から大人へも感染させる、そして大人から子供へ家庭内感染させたと思われる事例が圧倒的に多いということが確認できました。ここで取り上げた事例以外にも多数の経路が載っていますので、興味のある方は全体 PDF を眺めてみてください。

github.com

https://github.com/akira-okumura/COVID-19/raw/master/PDF/Aichi2021-01-08_kids.pdf

我が家の考え方としては、次の通りです。

  • 親は家庭外で会食をしない、職場でも気を付ける
  • 保育園も小学校も通わせないわけにもいかないので通わせる
  • 子供がもらってきたら諦めるが、その発生確率は高くはない
  • 子供は屋外で遊ばせ、他の家庭への訪問は避けてもらう